3.マルシェ・ジャポン・キャラバン(設計:メジロスタジオ)


photo : (c) 坪井宏嗣構造設計事務所


坪井)ウチは構造設計だか何だか分からない仕事が多いんですが、次もまた良く分からない仕事です。
次はマルシェ・ジャポン・キャラバンというぐるなび主催の移動市場。日本全国を回っている移動市場にある移動レストランの仮設デッキの仕事です。構造設計というよりイベント運営に参加した、くらいの感じです。

メジロスタジオの古澤君が中高の同級生なのですが、やってくれと頼まれました。楽しいプロジェクトでした。
仕掛け人は、後藤さんという方です。帯広でスノーフィールドカフェというのをやっていて、場所文化という会社を主催しています。この人の仕掛けで今回のプロジェクトが動いています。

photo : (c) メジロスタジオ


坪井)これは海外の市場ですが、このような市場が日本にも立たないか、地方都市に立たないか、ということがコンセプトです。キッチンカーという移動厨房のためのレストランをつくります。この提案をメジロスタジオがプレゼンしています。市場なので仮設だったことと、時間がものすごくなかったのがとても大変でした。話がきてから1ヶ月ちょっとでデッキの製作を終えなければなりませんでした。

最初に検討したのは、デッキの割付と大きさ。意匠側の希望は1820角。これだと枚数が多くなくて済む。ちょっとそれはサイズが大きすぎるのでは?と此方で指摘をしたところ、900角にしようというところに落ち着きました。
デッキのサイズは積載荷重から決めたのですが、一枚一枚を仮設で設置するのに都合のよい一人で持てる大きさになりました。


photo : (c) 坪井宏嗣構造設計事務所


坪井)
想定される設置場所が、道路とか駐車場とか、足場がどうなっているかわからない状態なので、高さ調整機構が必要でした。道路も見た目より凸凹しているので、精度調整と仮設というのがかなりポイントでした。メジロスタジオはアルコニックスというアルミメーカーに製作を依頼しました。

すごく細かい話なんですが、デッキを載せる金具から雌ネジが出ています。そこにデッキを差し込んでボルトで留めるという設計だったのですが、雌ネジを金物につけるときに溶接の余盛が出ているとデッキがガタガタするという問題があった。製作期間が短かったので、富士工業の袴田さんに相談しました。プレートに孔をあけて雌ネジを貫通させて、裏から溶接してしまえばデッキがガタなく納まると。袴田さんとはよく一緒に仕事をしていますが、こういう相談をすると、「こうすればいい!」と目的をわかって提案してくれるので重宝しています。


photo : (c) 坪井宏嗣構造設計事務所


聴講者)これが終わると使わなくなるんですか?

坪井)まだ全国の色んな地方都市を回っていて、二日か三日居るところもあるかもしれないけれど、一日で撤去して組み立てる、という本当のキャラバンみたいになっています。
最初帯広からスタートして、函館、福島を回って、製作の時間がなかったので、高崎で初めて完成形になりました。僕も現場へ手伝いに行って来ました。高崎駅前のヤマダ電機の前の広場で組み立てます。積み下ろしをしている人たちは現地のボランティアの人たち。そういう人たちでも組み上げられるものを考えました。ジャッキベースの上に載せる金物は、途中で数が合わないとかもありましたが、無事全数揃いました。



photo : (c) 坪井宏嗣構造設計事務所


坪井)ボランティアの方々が熱心だったおかげで、昼から組み始めて夕方くらいには組み上がり、家具をおいて、一晩このまま放置。次の日の朝には家具を設置して本当にレストランっぽくなります。膜がはってあります。

聴講者)コストはどうなんでしょうか?

坪井)全然想像できないんですよね、僕は見積もりにタッチしなかったので。見て見ぬふりをしていました。コストはちゃんとした請求が来るとすごいことになると思うんですが、後藤さんの心意気に惹かれて皆やっているんだと思いますので、あまり参考にならないとおもいます。
普通、構造設計ではこんなことやらないと思うんですけれど、何故か僕のところにはこういう話が来るので、楽しみながらやらせてもらっています。



photo : (c) 坪井宏嗣構造設計事務所


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