5.Kubomi (設計:設計事務所SUEP.)


photo : (c) 坪井宏嗣構造設計事務所

坪井)次はまた末光さんの設計で、施工が前川建設というところです。つい先日[Kubomi]というタイトルがついていることが分かりました。木造2階建ての住宅ですが、一階を掘り込み、周囲はコンクリートで埋めたいという事でした。2階のプランは1階のくぼみと全然関係ないです。

上部構造である木造の耐力壁について道路に面する壁は最小限にしたいという要望がはじめに言われました。木造二階建てだと壁量計算をしても、トータルの壁量は簡単にとれてしまいます。しかし告示で偏心の検討があって、建物外周に壁を配置しないといけない。そこで道路側の壁量を最小限にした関係で、法規は満たせているのですが、2階がすごく揺れてしまうんですね。それをどうにかしなきゃいけないということで、室内に想定していた柱の固定度のある柱脚とすることで、二階の揺れをおさめられないかということを考えました。


photo : (c) 坪井宏嗣構造設計事務所


坪井)お施主さんがウッドベースをやる人で、そのスタジオが入ります。スタジオのまわりにもともと4本の木柱を計画していたので、一階が掘り込んである事を利用して、耐圧版まで柱を伸ばして基礎壁面にボルトで止めれば柱脚で固定度がとれるんじゃないか、という事で進めていました。

ところが、末光さんが途中でコンクリートを全部一発で打ちたいと言い出しました。前川建設さんはコンクリートが得意な建設会社なので、一発で打ちたいと。
普通は木造住宅だと、基礎スラブを打って、立ち上がりでもう一度打つのが普通なんですが、それを一発で打ちたいということになり、先程の柱脚のやり方が出来なくなった。


坪井)
前川建設さんと相談して、鉄の箱に柱を入れようという事になりました。鉄の箱はコの字形に作って、蓋をしてボルトで止めています。箱に柱を差し込めばそれでいいじゃないか、というのもあるんですが、変形止めの固定柱脚なので、ガタが出ないようにそこはどうしてもボルトで留めておきたかったので、この様な納まりになりました。

コンクリートを一発打ちしたい事と、柱をボルトで留めたいという二つの設計側のこだわりのおかげで、基礎打設のときに柱が立っていないといけない事になり、コンクリ打設前は不思議な現場になりました。


photo : (c) 坪井宏嗣構造設計事務所


ヨコヲノ森)そもそもなんで一体で打ちたかったんですか?

坪井)それはいまだによく分からないです。

ヨコヲノ森)目地といっても、下にジョイントが出るだけですよね?

坪井)それは見栄えじゃなくて、理念的な問題だと思います。
元々前川建設さんが型枠屋さんだったので、曲面型枠とかも平気でやってくれました。一発で打ちたかったというのは現場を見ていてわかった気がするのですが、イメージとしてコンクリートの塊をえぐったという状態を造りたかったんだと思います。スラブがあってそこに壁を足していくという考え方ではなくて、塊から抜いているというような拘りがあったんだと僕は思っています。合っているか分からないですが。



photo : (c) 坪井宏嗣構造設計事務所


坪井)わざわざ一発で打ちたいという事なので、そこに拘りがあるんだと信じて進めていきました。現場に行った時、何つくっているんですか?って自分で言いたくなったんですけれど。
出っぱっている所はサンクンガーデンみたいな外部空間になるんですが、型枠が円形になるので、型枠留めの横桟の単管も曲がっていないといけなくて、前川建設さんが鉄筋を無理やり組んで固めてくれました。


photo : (c) 坪井宏嗣構造設計事務所


坪井)スタジオに柱がたっていますが、この木の柱だけだと振れ止めには足りなくて、鉄骨の柱も立てています。打設時に動くので、柱頭でちゃんと留めてくれています。

聴講者)柱は壁の中に入っているのですか?

坪井)実際は壁というか、立ち上がりがものすごくふけて分厚いので、立ち上がりの中に埋め込んでいる感じです。


photo : (c) 坪井宏嗣構造設計事務所


聴講者)箱は鉄筋に溶接しているのですか?ワイヤーで止めているだけじゃなくて?

坪井)止め方は、色んなところに止めて動かないようにしています。基礎との一体化ということでは、スタッドで留めています。

聴講者)この柱は木じゃないとまずいのですか?あっちは鉄骨なのにそこにこだわりが?

坪井)木造住宅なので柱は全て木で計画をしていて、この鉄骨はなくても法規上は成立するのですが、実際問題として水平力に対する横揺れが大きすぎるので、揺れを止めるために補助的に鉄骨を入れています。


photo : (c) 坪井宏嗣構造設計事務所


聴講者)FLはGLより低いのですか?

坪井)1mくらい下がっています。実は家具まで一発打ちにしています。まだ見ていないので、そこまで徹底する必要があるかはわからないんですけれど、たぶん必要があるんだと思います。

ヨコヲノ森)接地圧はどのくらいですか?

坪井)どの位だったか忘れましたけど、地盤改良が要らなかったので、その程度です。コンクリート量的には全然問題なかったです。なぜか構造家なのに上棟式に呼ばれてですね、しかもお施主さんではなく前川建設さんに呼ばれました。


photo : (c) 坪井宏嗣構造設計事務所


聴講者)床の仕上げはどうなっているのですか?

坪井)これはサーモスラブというのを使っていて、地熱利用もしているんですね。蓄熱にもなっている。基本的に全て土間です。躯体自体に蓄熱する方式をとっています。


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